夏のなごり、秋のきざし。

まだ暑さがのこる夏の一日、いつものバー。

 

ティカロスは、日本にきて20年近くなるジャマイカ人。

レゲエのクラブでDJをやっていた。日本人DJとはちがう音楽感性が

あって、お気に入りだった。彼を聴きに、彼が回すのをおめあてに、

よく通った。

 

15年ぶりに、バーでティカに会った。

「久しぶり…覚えてるか?」

声をかけると、すこし間をおいて、表情がくずれた。

 

「ああ、よく覚えているよ。

 あのコーナーで、つれの男性とよくきてたじゃないか。

 ふたりは、ミステリアスな感じで、印象にあるよ。

 彼、亡くなったんだって」

 

「うん、死んでもう15年になる」

あの年も暑い夏だった。いつまでも、やすまる秋がこなかったのを、

想いだす。

 

平成の、最後の夏が終わります。今週末は、もう9月。(天童キッド)